海色の手紙

馴染みの友人から手紙が来た。遠くの海辺の街に越してった友人だ。帆船が描かれた白い封筒。私はおとっときのペーパーナイフを取り出して、封を切った。中から潮騒の音が聞こえる。潮風の香りをさせながら、青い便箋から言葉がはねた。
『お別れ会からもう1週間。お元気ですか、私は元気です』
波間の行間に赤い貝殻、白いヒトデ。海辺の街のグラスチャイムが太陽の光を散らして染める。
『海辺の人はみんな暖かです。優しくて活気があります。そちらはどうでしょう？緑の街は変わらずですか？』
君の愛した青竹色のインクが滲む。別れ際の君の横顔が、私の心に蘇る。
『お返事ください。待ってます』
私は早速手紙を書いた。クロッカスとクローバーを閉じ込めた緑の便箋。花の香りや夜の風も吹き込んだ。
『お手紙ありがとう。私は元気。星まつりは例年通り……』
街の空気がインクに馴染み、海辺の貴方に飛んでいく。お返事ください、待ってます。