しかるべきポイント

先生は迷っている。授業中にも関わらず、おしゃべり、スマホ、早弁…。ここは叱るべきか否か。すぐ判断できないのは、新しい評価システムのせいだ。

「今年度から、あらゆる評価は〈しかるべきポイント〉に基づいて行います」

先月の職員会議で校長がこともなげに言った。教師としてしかるべき言動にはポイントが付与される。加算だけなら良いが、マイナスもあるから恐ろしい。〈あるまじきポイント〉がかさめば、昇進はおろか基本給すら危うい。

教室はカオス化している。間違いない。叱ってしかるべきだ。問題はその方法…。ぐじぐじ考えを巡らせていると、生徒会長が机を叩いて立ち上った。

「お前ら、いい加減にしろよ！」

おい待て、事態を複雑にするんじゃない！君の尻馬に乗ることは容易い。しかし、それは教師としてあるまじき…。いや、しかるべき道もあるぞ。

「オーケー！じゃあ材料が揃ったところで、倫理の授業をはじめようか」