花粉屋(十四)
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「聞こえるか、奥菜造(おきなみやこ)」
植え替えた鉢を両手に包み、呼ぶ。焦げた葉は切り落とし、そこにあるのは湿った黒土。
「仮説が正しければ、必ず答える。姿も見える」
沈黙を風が過ぎた。
答えなければ、結論は白紙に戻る。それを期待する自分もいて、けれど、打ち砕かなければ前へ進めない。
「答えろ。そして認めろ。……私が見てきたのは、全部私が創った幻影だ」
『幻たぁ、つれねぇ言い草だな』
土から湧き出る様に声が滲む。
蒲公英が刈安の袖を振り、懐かしい顔に変わる。遺影と同じ顔。同じ笑み。
「不老不死の霊薬なんて無い。あったのは、脳神経を侵し、幻覚を見せ続ける麻薬物質。かぐや姫の竹は、花粉が特殊な単なる竹だ」
実験室の爆発で浴びた標本。見え過ぎる目のからくり。
「人は不死になれない。生き返らない。私達の子供も、造も死んだ」
『……あばよ、佳久夜(かくや)』
幻の腕が頭を抱き、煙になって散った。
植え替えた鉢を両手に包み、呼ぶ。焦げた葉は切り落とし、そこにあるのは湿った黒土。
「仮説が正しければ、必ず答える。姿も見える」
沈黙を風が過ぎた。
答えなければ、結論は白紙に戻る。それを期待する自分もいて、けれど、打ち砕かなければ前へ進めない。
「答えろ。そして認めろ。……私が見てきたのは、全部私が創った幻影だ」
『幻たぁ、つれねぇ言い草だな』
土から湧き出る様に声が滲む。
蒲公英が刈安の袖を振り、懐かしい顔に変わる。遺影と同じ顔。同じ笑み。
「不老不死の霊薬なんて無い。あったのは、脳神経を侵し、幻覚を見せ続ける麻薬物質。かぐや姫の竹は、花粉が特殊な単なる竹だ」
実験室の爆発で浴びた標本。見え過ぎる目のからくり。
「人は不死になれない。生き返らない。私達の子供も、造も死んだ」
『……あばよ、佳久夜(かくや)』
幻の腕が頭を抱き、煙になって散った。
ファンタジー
公開:19/04/11 22:15
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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