戦国サラリーマンの兵日

念願のマイホームを購入し、一国一城の主となった私の天下は３日で終了した。
借家住まいの時は三歩下がって淑女とした妻が突然天下を取った。
力を増した妻は私に全責任を押し付けるようになった。かかあ天下の責任転嫁だ。
城主となった妻の命に従い、私は今日もカツラという名の兜を被り、定期剣を携えると家を出た。
男たる者、外に出れば百人の敵が待ち構えている。昨日の友は今日の敵。営業成績という名の敵の首を上げる為、足軽宜しく仲間に先んじて外回りに出る。
戦という名の業務の終了を告げる音が鳴る。今日は花の金曜日。宴が催される。
契約取れずに帰ってきた敵前逃亡同然の者には切腹を言い渡される。この宴で自腹を切れと。
私は同僚にタイシャクを頼まれていた。介錯ではない。今月厳しいから貸借してくれと。
すまないがそれは出来ない。私だって妻による小遣い縮小に苦しめられている。
兵私の土下座など、おカミは見飽きてるよ。