花粉屋(十三)

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岩永さんに、植物園から鉢と用土を運んでもらい、病院の屋上で作業を始めた。
彼女や元木園長の手を借りたくなかった。全て伝える事は出来ないし、自分の不始末を人に加担させれば、ますます自己嫌悪に陥る。
萎びて焦げた葉。炭の臭いの綿毛。割れた鉢を砂状の土が流れた。爆炎と熱風と長時間の放置。乾涸びた側根と主根がぷらりと垂れた。

『馬鹿、よせ!』
焔より瞬間早く刈安が被った。押された様に感じ――感じただけだが――体を倒した。直撃を受ければ、全身火傷で命が無かったと医者が言った。
花粉の飛散による粉塵爆発。同じ事故を大学でも起こした。
『佳久夜(かくや)』
判るはずのない本名。知るはずのない危険。
『るっせぇな。……さっさと取りやがれ』
胡坐をかく仏頂面が、喧嘩した時の顔と似ていた。

見え過ぎる目。不老不死の霊薬。
二人きりの実験室。造(みやこ)が並べた無数の標本。
答えの鍵は、今、手の中にあった。
ファンタジー
公開:19/04/11 18:11

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。

小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍(電子/紙)を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。

☆SSGと皆様のお陰で生まれた本たち☆

ショートショート・アソート
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詩集
君に伝えたかったんだ。

いつも本当に、ありがとうございます!

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