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桜の花の舞い散る夢を見ていた。
それはわたしの小学校の入学式にお母さんに手を引かれて見た景色だ。
でも夢だからとても奇妙なんだ。
ピンクの花びらがたくさん空から降ってくるんだけれど、桜の木はどこを見ても一本もみあたらない。
それなのに花びらだけがひっきりなしに降ってくる。
道路はもう一面が花びらで、風が吹くと舞い上がり、渦を巻いてわたしを包んでしまうほど。
横を流れる川も、水面がびっしりと桜の花でおおわれている。
水に乗って花は流れ、ある場所ではよどみ、ある場所では渦を巻いていた。

目が覚めても、まだ花吹雪に酔ったような感覚が残っていた。
家を出ると四月なのにひどく寒い。
公園の桜の木はソメイヨシノ特有の伝染病で枯れてしまっていて丸裸だ。
雪が降って来た。
それは大気汚染でピンクに染まった雪だった。
風も出てきたようで、さっき見た夢の中の景色そのままだった。
SF
公開:19/04/11 13:26
更新:19/04/11 13:34

家韮真実(いえにら・まみ)( 兵庫県 )

もともとは漫画を描いていました。
漫画のアイデアを文字で書いているうちにショートショートも書くようになったんですよね。
名前はもちろんペンネーム。
実際にはない名字を考えました。
読みは、男の子気分の時は『いえにら・まさみ』
女の子気分の時は『いえにら・まみ』に変わります(笑)

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