内臓二十物語 第八臓(小腸)

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塩漬けにしてあった小腸を水につけた。ボウルに挽肉と塩、砂糖を入れ、こねる。スパイスを入れ、さらにこねる。
肉を絞り袋に入れ、口金に小腸をセットし、ニュルリと肉を絞りだした。肉を詰めた小腸の端を結び、良い長さにねじる。
「小腸の長さは羊で25~35m、豚で15m~20mだって言うよ」
「ふーん、人間は?」
「人間は6~7m」
「短っ!」
「大した量のソーセージにしかならないな」
彼女は笑った。
「元々、ウインナーは羊の腸、フランクフルトソーセージは豚の腸、ボロニアソーセージは牛の腸に詰めたものなんだ。今は人工ケーシングも使うけどね」
「へえ、これは?」
彼女はソーセージに齧り付き肉汁を滴らせて、ニヤッとした。
「ソーセージの中身は肉屋と神様しか知らないってことわざは知ってる?」

僕はクーラーボックスからはみ出した髪の毛に気が付いて、彼女から見えないように体をずらし、にこりと笑い返した。
その他
公開:19/04/11 07:59
更新:19/04/18 22:30
内臓二十物語 第八臓(小腸) 原案そるとばたあ

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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