花粉屋(九)

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「かぐや姫が実在する?」
「ああ。竹取物語は虚構じゃなく、実際の事件だ。竹藪の金の竹。姫の急成長と絶世の美。貴族達に課す難題。月への帰還と不死の霊薬。全て大規模な集団幻覚だ」
お伽話に憑かれた餓鬼の妄想。
「宇宙人襲来説?飛躍し過ぎだ」
「違う。一種の中毒。八十年から百二十年周期の、竹の開花を凶兆と捉える風説。脳神経に作用し、強い幻覚を誘発する花粉を持つ、未知の種が存在した可能性がある」
それがかぐや姫の正体で、富士山で焼かれた不死の霊薬だと。
「竹の花は、咲けば藪ごと枯れる」
「だから未知の種だ。永久に咲き、花粉を放出する。その遺伝子を解析し、人間に応用出来れば、寿命の壁も、生死の境界だって超えられる」

「……造(みやこ)」
元凶が自分と知りながら、怖くなって離れた。離れた間に彼は消え、空っぽの胎と、見え過ぎる目だけが残った。
これで片が付く。硝子に閉じ込めた花粉を、蛍光灯に透かした。
ファンタジー
公開:19/04/11 02:49
かぐや姫の生物学的If

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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