量子の霧は、妻がキャベツに何をかければよいのかを応えることはできない

　デニーズで昼食中、妻が「キャベツには何をかければいいのかしら」と言った。ハンバーグとチキンカツのプレートにはタルタルソースがついていたが、ドレッシングはなく、卓上には塩があるだけだった。
　夫は、端末を操作して、しばらくディスプレーを見てから「前も同じこと言っていたよ」と言った。すると妹は「そうだった？」と言い、兄の目の前の、ガスト特製ドレッシングを手にとった。

　彼は量子コンピューター会社のSEで、Fogsシステムの実証実験を行っている。
　現実は遍在し続ける量子のもつれ（Fog)の境界面に過ぎないから、全Fogをそのまま記録しておけば、全時空の任意の時空を抽出再生することが可能なのである。

　現在は、座標を限定して運用しているため、抽出行為による揺らぎが及ぼす全体的影響までは把捉しきれず、上記のような断絶が頻発するが、これも全Fogの記録が可能となった暁には、解消できるであろう。