ささくれ

左手の親指にささくれができた。
面倒なので消毒もせずに放って置いたら、腫れてきた。
どうやらバイ菌が入ったらしい。
消毒薬を塗って、包帯を巻いたけれど、ちっとも良くならない。
赤かった患部は黒ずみ、そこに白い膿が溜まった。
「病院で切って膿を出してもらった方がいいよ」
友人は言った。
「病院には行ったよ。でも、どの医者も切れないって言うんだ」
「え？　ただの化膿したささくれだろ」
「うん。それがさ」
僕は包帯を解いて友人に見せた。

僕の親指はパンダになっていた。
パンダは僕の顔を見ると、餌を要求した。

笹くれ、笹くれ

友人は呆然としている。
お腹が空いている親指サイズの小さなパンダは、手をわにわにと動かした。

笹くれ、笹くれ

「早く治したいんだけど、どの医者も泣きながらこんなに可愛い生き物を切るなんてできないって言うんだ。どうすればいいんだろうね」