樹冠の君

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こっちにおいでよ。って白い服を着た友達が俺を呼ぶ夢を見た。
友達がいるところは白樺の木のてっぺんでね。登れないよって叫び返したけど、おいでって聞かない。
その日は嫌に沈んだ気持ちだった。朝から巡り合わせが悪かった。そんな日に妙な夢を見たもんだ。都合のいいことにキノコがたくさん生えた白樺で、登れなくもない。俺は登ったよ。木登りなんて子どもの頃以来だ。
最後は友達が手を伸ばして、俺を引き上げた。
そこで、気がついた。
友達じゃない。知らない奴だ。
誰?って聞いたけど、彼は笑うだけだった。
「ここは君の心のてっぺんだ」
青空に白い枝が伸びていく。小さな音がパキパキと聞こえる。春だ。蕾が芽吹きの音を立てる。
「春の呟きを君と聞きたかったんだ」
彼が呟いた。
俺は本当は双子だったんだって母さんが言っていた。人の形になる前に溶けて、一つになったのが俺だって。
夢の中で俺は、初めて兄弟に会えたんだ。
その他
公開:19/04/12 00:38
更新:19/04/15 14:05

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

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