タバコ臭い金木犀

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強い甘い香りに、私は空を見上げた。高く澄み渡った秋の空。人の心や愛情などが変わりやすいと言うけど、私は変わらない。脳裏にキンちゃんの笑顔が浮かぶ。
キンちゃんは幼馴染の男の子で、幼い頃から家族のように育ってきた。
今、私の視線の先にはオレンジの花が枝に密生させて咲いている。金木犀だ。
花粉症のキンちゃんは、この香りが苦手で鼻をグズグズさせながら「くっさ! くっさ!」と喚いていた。
そんなキンちゃんに「キンもくせぇ!」と返すのが私のお約束。
そうやって笑い合っていた頃が懐かしく、胸が締め付けられる。
キンちゃんは二十歳になった秋、バイク事故で帰らぬ人となった。

「タバコなんてやめなよ」
「この香りで金木犀の匂いを相殺してんだ」

それが私たちの交わした最後の言葉。
私はタバコに火をつけた。吐き出す煙が目にしみる。タバコ臭い金木犀の香りに涙が滲んだ。私、今でもキンちゃんが……。

大好きだ。
青春
公開:19/04/09 23:57
タバコ臭い金木犀 スクー

壬生乃サル

まったり。

2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)

壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

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