第三回拉致監禁文学賞 佳作 38歳主婦
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霞寺のスーパー丸滑で、ヒロヤの入学祝の材料を買って、南側の自転車置き場にいく途中、ナンバー身寄301 ち 44-44の、中が見えない白いワンボックスが邪魔だったので、通報しようとメモしていたら、中から二人の若い男(黒のアディダスのジャージとボロボロのジージャンに赤いスニーカー)が出てきて、私に、黒い布の袋を被せた。私は悲鳴を上げようとしたが腹を殴られ、真新しいランドセルを背負ったヒロヤの微笑む顔が薄れていった。私は三畳ほどのコンクリートに囲まれた部屋に繋がれて、五日が過ぎた。食事は一日二回。ローソンのパンとペットボトルのことが多い。持ってきた男から地域限定のポテトチップの香りがしたので、スーパーからそう遠くはないのだろう。小さな窓から山が見える。蘇ケ峰だろうか。主治医から小学生になるのは無理だろう、と言われていたヒロヤ。元気に育ってくれたね。お母さんは、ずっと、ずっと見守っているからね。
その他
公開:19/04/10 16:14
更新:19/04/10 16:38
更新:19/04/10 16:38
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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