内臓二十物語 第七臓(肺)

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僕はぶどうの房のようなものから、赤褐色の粒を取って口に含んだ。体中に酸素がいき渡る。
地球から酸素がどんどん減少していると危惧されるようになった頃から、あちこちに大きい人が現れた。
大きい人は人のカタチをした大きな木だ。ちょうど人の肺にあたる位置に、肺胞のような酸素の入った実がなる。僕らは恵みの実をもらう。一粒で1週間分の酸素だ。
酸素を欲しいのは、人間だけじゃない。
動物たちが実を食べるようになると、人間はいらない動物を処分した。
この星に何本の大きな木があるのだろう。いらない人間もいつか処分されるのかもしれない。
その時、僕の足が地面から動かなくなった。あれ?焦って体を動かそうとしたけど、足から頭に向かって体が少しずつ動かなくなる。そして、かわりにぐんぐん体が大きく伸びていった。
僕は薄れる意識の中で、ああそうかと思った。
遠く向こうで友達が、立派な枝ぶりの腕を振り上げ手を振っていた。
その他
公開:19/04/10 15:11
内臓二十物語 第七臓(肺) 原案そるとばたあ

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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