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新しいお札が発行された。
裏には何もデザインがなく小説が印刷されているのだ。
原稿用紙にして1~3枚のショートショート作品で、お札一枚で完結する。
面白い作品もあれば、どこかで一度読んだ気がする作品もあった。
一応文章もちゃんとしているのでプロの作品らしい。
そして、同じ作品は一つもないのだ。

小説が印刷されたお札が当たり前になった頃、一枚では完結しない小説が出始めた。
お札5枚で完結、20枚で完結という風に次第に長いものが増えていくのだ。
ちょうど続きのお札が揃えばいいが、なかなかこれが難しい。
自分の持っている小説の続きのお札を探すのに毎日血眼になっている。
やがて長編小説が印刷されるようになり、俺はアルバイトを三つ掛け持ち、お札を貯めるためだけに働き続けた。

ある日、宝くじで3億円が当たり大喜びしたが続きが揃った新札ではなかった。

本棚には、未完のお札小説がずらっと並んでいる。
その他
公開:19/04/10 14:54
更新:19/04/11 17:40

家韮真実(いえにら・まみ)( 兵庫県 )

もともとは漫画を描いていました。
漫画のアイデアを文字で書いているうちにショートショートも書くようになったんですよね。
名前はもちろんペンネーム。
実際にはない名字を考えました。
読みは、男の子気分の時は『いえにら・まさみ』
女の子気分の時は『いえにら・まみ』に変わります(笑)

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