帰り道の忘れ物

あっ、しまった。うっかり電車に傘を忘れて来たわ。どうしよう。
サヤカは自分のあまりの不甲斐なさに悲しくなった。
それというのも先日、高級デパートで５万円を支払い、買ったばかりの新品の傘だったからだ。
ああ、私のバカバカバカ。なんで忘れちゃったのよ。
サヤカが後悔するのには他にも理由があった。
それは忘れて来た場所が海外だったからである。
ああ、なんですぐに気付かなかったの。飛行機で日本に着いてから思い出しても仕方ないじゃない。ああ、レーモンド。あなたは今どこにいるの。
そう、サヤカはあの傘にレーモンドと言う名前まで付けていた。サヤカはレーモンドとの突然の別れに号泣した。
そんなサヤカの耳に空の方からカサカサッと物音が聞こえた。
あっ、あなたはもしかして。レーモンド。レーモンドなの。会いたかったわ。もう、心配していたのよ。貴方の事を片時も忘れた事はなかったわ。もう、勝手にいなくならないでね。