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昔このあたりに温泉があったらしい。
とても愛されたらしいが、町の開発によって無くなったそうだ。
僕が来ているのは、その温泉の“幻”が現れると噂される、近くの廃墟。
もっと沢山の人に入ってもらいたかった温泉の残留思念が“それ”を見せると言われている。

足を踏み入れる。部屋中に埃が充満していて、窓からの光が当たってきらきらと舞っている。
一周、ぐるりと見回した時だった。
埃が急に、ざあっと色を変える。

現れたのは、まさに噂通りの温泉だった。
脱衣所まである。折角なので入ってみることにする。
体を洗い、湯船にざぶんと浸かる。硫黄の匂い。立ち上る湯気と、少し熱めのお湯。真っ白いタイルが光を反射した。


いいお湯だった。脱衣所で服を着ていると、突然鼻がむずむずし始めた。
はっくしょん。

先ほどまで温泉だった場所は、ざあっと色を変えて、元の廃墟に戻っていた。

少し、硫黄の匂いが鼻をかすめた。
ファンタジー
公開:19/04/09 20:06
埃っぽくなる温泉 スク―

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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