抑えきれない衝動

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「久し振り」
半年振りに帰国した友人の研究室を訪ねると、梶は大袈裟に驚いた顔をした。
「その声は内田か?」
「僕の顔忘れた?」
「…何の用だ?」
「これの意見が欲しいんだ」
梶に書類を手渡す。とある農業害虫用交信攪乱剤のモニタリング結果だ。メスフェロモンを配合した粉状の薬を設置すると、誘引されたオスに薬が付着する。するとそのオスをメスと勘違いして他のオスが集まり、結果として繁殖が抑制される。薬剤耐性がある昆虫を駆除するために僕が開発した薬だ。結果は同数のメスを入れていたにも関わらず、次の世代の個体は一頭も産まれなかった。
「予測では繁殖抑制は出来ても阻止は出来ないはずなんだ」
「そんなの理由は簡単だ。薬が付着したオスが絶世の美女に見えたって事さ。内田、その薬、お前にも付着してるぞ。俺には今、お前がエロい女に見えている」
梶はゴクリと唾を飲み込み書類を投げ捨てた。
「そしてもう我慢の限界だ」
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公開:19/04/09 19:40
詳しくは 交信攪乱剤で検索 世の中には怖い薬が いっぱいあるね。

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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