フランクフルトの男

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 M高速道路Tサービスエリアに立ち寄った時のことだ。
 旨いと評判のフランクフルトを買い、暖めなおすために電子レンジのところへ行った。そこには男がにこやかに立っており、「暖めですね! どうぞこちらへ」と、透明なビニール手袋を装着した手を差し出してきた。自然な流れで、私は男にパックを渡し、男はパックをレンジに入れた。それから男は流暢にフランクフルトの説明をして、最後に「頬張るのに邪魔になりますから串を抜いときますね」と言った。
 「え?」
 聞き返す間もなく、レンジがチンと鳴った。男はパックを持ったまま、フランクフルトと串との境目を左手の指で摘み、右手で串の先端を持つと、串をスッと引き抜いた。そのとき男は腰を震わせ、「アッフ」と吐息を漏らしていた。
「どうぞ。運転お気をつけて!」
 私は、串を引き抜かれたフランクフルトが入ったパックを持ち、何かとてつもない辱めを受けたような気分で車に戻った。
その他
公開:19/04/06 14:53
更新:19/05/28 11:45
シリーズ「の男」

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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