回想列車

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電車の音を聞いている。そこに子どもの頃の思い出があるような気がした。
「何が怖いんだろう」
枕木を通過する度、電車が風を切る度、心は遠くへ運ばれる。
「何が苦しいんだろう」
人の気配、アナウンス。
『次、止まります』
車掌が告げる。
子どもの頃の海。山。草原。バス。地下鉄。電車。飛行機。教室……。
子どもから私にあって、大人になっても怖いもの。
『次、止まります』
車掌がのっぺりと告げる。みんな降りる準備をしてる。私は、一人、ただ一人……。
「何がそんなに……」
寂しいんだ。一人が好きなのに。
『終点。次、止まります』
私の心は遠くへ行った。友だちのいない終着駅の待合室で、誰かの気配を探している。
一人の寂しいお化けのように、見つけてもらうのを待っている。
その他
公開:19/04/06 09:45
線路の音が好き

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

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