本末店頭

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「それはどうかと思う」
「良いじゃん記念だし」
夫婦で揉めるのは日常茶飯事。この平行線も、起こるべくして起こったわけだが。
「皆同じ事考えるぞ。絶対かぶる」
「元年だよ。『令和』以外ありえない」
「駄目駄目。全国津々浦々『令和』の大行進だから」
この春誕生した、うちの子の名前だ。昨今、巷は難読珍名が溢れ、ちょっとやそっとじゃ目立てない。あえて迎合する気はないとは言え、令和元年に『令和』なんて安直過ぎる。
「平仮名は?『れいわ』なら響きも綺麗で、柔らかい感じも出る」
「ヤダ。漢字は変えない。変えるなら読み」
読みを変える?確かに、発音が違えば、差別化は図れそうだが。
「令和の和は『足す』でしょ?令に足す。れいたす……れたす!」
「それはもっとどうかと……」

最終的に妻が押し切り、読みは『れたす』で届けた。
店に並ぶうちの子達を見て、現在盛大に後悔中。
『今年度新品種:令和(れたす)レタス』
ミステリー・推理
公開:19/04/06 08:07
※フィクションです。 法律により、元号をそのまま 商標には登録出来ません。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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