箱庭

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 机みっつ分の距離が、僕には丁度良い。声は届けど内容は読めず、表情が見えども視線には気づかれない程度の空気の壁。
 今日も綺麗な笑顔だね。なんの話をしているのかな? 僕は君の名前くらいしか知らないから、見当がつかない。髪型の話? 課題の話? まあ、僕には関係ないよね。それでいいんだ。
 花壇の花が咲いているか確認するように、君が笑っていることを願う。
 たとえ、僕が君の笑顔の右半分しか知らないことに心が痛んでも知らないふり。十分僕は幸せだからね。

 保証された小さな幸せを、脆く大きな幸せのために賭けてはいけない。君がすべてを失いたくないのなら。
 
 だから、僕は今日も半径机みっつ分の箱庭を守るよ。
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公開:19/04/07 14:00

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