上を向いて歩こう

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茶色の毛のトイプー。なんか木みたい。名前は「ツリー」にしよう。

6年が過ぎた桜が満開のある日。ツリーは地面に落ちた桜の花に身体を擦り始めた。「汚れるからやめなさい」と言っても諦めず、散歩の度に桜の花を擦り付けた。私はイタズラ心でツリーの身体をピンク色に染めてやる事を思いつく。「ごめん、ツリー」素人はやるもんじゃない。胴の部分だけピンク色になってしまった。茶色の足にピンク色の胴体は桜の木のようだった。でも、ツリーはとても機嫌がよく喜んで散歩に出掛けるようになった。

新緑の季節は青々とした葉っぱを擦り始めるから緑色に、紅葉の季節には落ち葉を擦り始めるから赤色に、雪が降ると白色に染めてあげた。

翌年早々にツリーは亡くなった。

桜の季節。
1本の桜の木に出会う。それは茶色の足にピンク色の胴体のツリーのようだった。下ばかり見ていてはツリーに会えない。「ありがとうツリー」私は上を向いて歩いた。
その他
公開:19/04/07 07:39

まりたま

いつか絵本を1冊出せたら...
そう思いながら書いてます。
少しだけホッコリしていただければ嬉しいです。
でも、たまにブラックも書きますけど。

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