バイオリン

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「待ってよ。私を置いていかないで」
美咲は、聡が搭乗している飛行機の後を追いかけて走った。が、飛行機はどんどんと遠くの雲へ吸い込まれていった。

美咲は道の上で、肩で息をし、膝に手をつき、涙をぽろぽろとこぼした。

「また、今度っていつ会えるのかな」

美咲は空を仰ぐ。
空はくすみが無く、青く澄んでいた。

美咲は涙で濡れた目元を、ごしごしと腕でこすり、笑顔を作った。

聡は、プロのバイオリニストになるために、ウィーンへ旅立った。

それから、5年後・・・
地元の学校を卒業した生徒たちが、懐かしそうにタイムカプセルを掘り起こしてる頃、聡から連絡が入った。

美咲は、はじめ、電話越しの相手が聡であることに気がつかなかった。それほど、記憶が掠れていた。

聡は、プロのバイオリニストになれたことを美咲に報告し、プロポーズをした。

美咲は、電話越しで、遅すぎる告白に、号泣した。
青春
公開:19/04/07 00:05

神代博志( グスク )









 

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