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お母さんの鏡台が窓からの西日を受けて、畳の上に光を投げている。
ひどく寒いこの部屋の中にいて、心まで寒いわたしにはそこだけが暖かく見えた。
近づいて座り、光の中へ手をやると確かに本当に暖かいのだ。
その暖かさはお母さんの暖かさだった。
お母さんの笑顔がそこにあるような暖かさだった。

夕日は傾き、その光は畳の上を移動しながら薄くなって行った。
それにつれて暖かさも薄らいで行く。
すっかりその光が消え、部屋が暗くなるまでわたしは畳の上に右手をずっと置いたままだった。
ほんのわずかな暖かさがまだそこには残っていたけれど、手を離すとそれも逃げてしまう。
はかなく消えてしまう。
部屋の寒さにわたしの右手は痛みさえ感じた。

真っ暗な部屋を見渡した。
写真の中のお母さんの笑顔はやさしい。
明日からは一人きりで生きて行くんだという事を改めて思い出していた。
ファンタジー
公開:19/04/04 15:43

家韮真実(いえにら・まさみ)( 兵庫県 )

もともとは漫画を描いていました。
漫画のアイデアを文字で書いているうちにショートショートも書くようになったんですよね。
名前はもちろんペンネーム。
実際にはない名字を考えました。
読みは、男の子気分の時は『いえにら・まさみ』
女の子気分の時は『いえにら・まみ』に変わります(笑)

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