守らない約束をしよう

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散り残しの梅を収め、盛りの桃と藪椿を撮った。木瓜。山桜。川まで歩き、連翹に雪柳も捕まえた。2、3キロ南へ下れば、山吹があったはず。丸一日掛け、ありったけの花木を収集する。
去年は一時に咲いて、桜があと三種と、藤まで手に入った。帰り道、薄情に握った辛夷を見上げ、茶色い枝だけ保存する。
送る宛てもないくせに、状況と代償行為に酔ってる。

悲恋に浸るのが気持ち悦いんだろう。
頭に棲み付いたもう一匹が囁く。
そうだな否定しない。認めたら唾吐いて黙った。
気付くのが遅かった?気付いても仕方なかった?違うね。どうにかする気が最初からなかった。卑怯者の甘ったれめ。

『この陽気じゃ葉桜になるから、埋め合わせに』
1週フライングで送った。横に並べれば花なんか口実だった。
ますます綺麗になった彼女は、幸せに子供を抱いてる。
『またいつか見ようね』
すっかり散ったら、限りなく仮定法過去な、未来の約束をしよう。
青春
公開:19/04/04 14:59
更新:19/04/04 15:08

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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