桜のかたち
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桜が散り始めた。
この時期になると、いつもあなたを思い出す。
私の髪や肩に落ちてきた花びらを一枚一枚つまんで。私はずっとあなたのことを見上げてた。
幸せで優しい時間だった。
強い風が桜の花びらを舞い上げる。
薄いピンクが渦巻いて、人が立っている位の大きさになった。
それは、あなたの形だった。私にそっと腕を伸ばしている。
「迎えに来てくれたの?」
嬉しくて泣きそうになったけれど、あなたの姿が滲んでしまわないよう涙はこらえた。
ゆっくり近づいていく。あなたのその手と私のこの手が重なる距離まで。一歩、二歩。
三歩めで次の風が吹いて、桜色のあなたをかき消した。
花びら一枚も掴めなかった。
しばらく待っていたけれど、何度風が吹いてももうあなたは現れなかった。
「また会いに来るね」
いつかあなたに手が届くかもしれない。そうしたら。その時は、
「私を連れて行ってね」
散っていく桜につぶやいた。
この時期になると、いつもあなたを思い出す。
私の髪や肩に落ちてきた花びらを一枚一枚つまんで。私はずっとあなたのことを見上げてた。
幸せで優しい時間だった。
強い風が桜の花びらを舞い上げる。
薄いピンクが渦巻いて、人が立っている位の大きさになった。
それは、あなたの形だった。私にそっと腕を伸ばしている。
「迎えに来てくれたの?」
嬉しくて泣きそうになったけれど、あなたの姿が滲んでしまわないよう涙はこらえた。
ゆっくり近づいていく。あなたのその手と私のこの手が重なる距離まで。一歩、二歩。
三歩めで次の風が吹いて、桜色のあなたをかき消した。
花びら一枚も掴めなかった。
しばらく待っていたけれど、何度風が吹いてももうあなたは現れなかった。
「また会いに来るね」
いつかあなたに手が届くかもしれない。そうしたら。その時は、
「私を連れて行ってね」
散っていく桜につぶやいた。
その他
公開:19/04/04 12:09
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