北風とチョコレート

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「あ~あ、今年もチョコ渡せなかった。」
机の中にも下駄箱の中にもチョコを入れるまでやっぱり勇気が出なかった。帰宅部の宏明くんは下校が早いのだ。
小さな紙の手提げに入ったチョコレート、家で温かい紅茶と一緒に食べようかな。ミルクを入れたストロベリーティー合うのよね。
幹線道路沿いの本屋に通りかかった時、よく知っているメガネを掛けた細面の学ラン姿が本屋から出てきた。スマホを確認している様子でこちらに気付いていない。
10mの距離。歩道を歩く彼の背中を追いかける。
ドキドキ。
道路を走る車の音で足音は聴こえない。
もし振り返ってくれたら。

上り坂に差し掛かったところ、風が強まる。寒い。
マフラーを巻き直す、巻き直すはずが…北風が強く吹いた。
風に乗り宙を舞う。
「あっ」
風に乗って10m前を歩く彼にマフラーが後ろから巻き付く。
宏明くんがこちらを振り返った。
チョコの入った手提げが揺れた。
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公開:19/04/04 22:25
月の音色 月の文学館

ひさみん

ショートショートというよりも短編小説、掌編小説という感じになってしまうかもしれません。
自分のペースでやっていこうと思っております。
ショートショート・ガーデンにアクセスする頻度は高くありません。
1回のアクセスで多くても10作品見るかどうかです。すみません。

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