押しかけ守護女神

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「よぉ」
 目覚めて最初に眼に入ったのは、さかさまになった見知らぬ女の顔。白い歯を見せ、ひらひらと手を振っている。
「あの、どちら様?」
「んー、女神様って奴だ。今日からお前の守護神をさせてもらう。よろしく」
「いや…その」
 何なんだ、それは。話が全く見えない。
「昨日のことは覚えてるか?」
 そうだ、アパートに荷物を運び終えた後だった。ぶらぶらと食事を買いに外に出たら、小さな神社に行き会った。特に信仰心というものはないが、何となく殊勝な気持ちになって、賽銭を放り込み、お参りの真似事はしたのだっけ。
「けねげな坊やの姿に、あたしも、母性本能をくすぐられた、というわけだ。安心しな。病も災いも視界に入った端から、あたしが張り倒してやる。女神ってのは強いんだぞ?そこらのへぼ男どもなんか目じゃないんだから」
 ばしん、と胸を叩く。そんな相撲とりのような巨体を前に、僕はただ頷くしかなかった。
その他
公開:19/04/02 20:46
更新:19/04/04 12:20

ヴェルデ( 東京 )

現在、歴史や美術についてのコラムを書くライターとして活動中。
夢は、アート小説を書くこと

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