老婆
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おや、まあ。また泣いてるのかい。
悲しいことがあると決まってこの木の下で涙を流す。すると、何気ない動作でハンカチを差し出す老婆。誰だかは知らない。
今日はどうしたっていうのさ。
老婆はタメ語で話しかけてくる。どこかで会ったのだろうか。誰かに話を聞いて欲しくて、私もペラペラと涙を流す理由を話す。彼氏とケンカしまったのだと。それも相手の連絡がマメじゃない。そんなことに私が怒ってしまったのだ。
小さい悩みだねえ、そんなのいつか笑って話せるさ。
老婆は少し遠くを見ながら優しい声色で答えた。他人事だと思って。
そりゃあ、わかるさ。あんたはワタシだもの。
「え?」
私がそういうと、老婆は消えていた。
―十数年後
《過去の自分に逢いに行くことができるシステムがいよいよ一般公開されました。椅子に座って、戻りたい時間を思い浮かべるだけ。過去を変えて素敵な未来を手にしましょう!》
悲しいことがあると決まってこの木の下で涙を流す。すると、何気ない動作でハンカチを差し出す老婆。誰だかは知らない。
今日はどうしたっていうのさ。
老婆はタメ語で話しかけてくる。どこかで会ったのだろうか。誰かに話を聞いて欲しくて、私もペラペラと涙を流す理由を話す。彼氏とケンカしまったのだと。それも相手の連絡がマメじゃない。そんなことに私が怒ってしまったのだ。
小さい悩みだねえ、そんなのいつか笑って話せるさ。
老婆は少し遠くを見ながら優しい声色で答えた。他人事だと思って。
そりゃあ、わかるさ。あんたはワタシだもの。
「え?」
私がそういうと、老婆は消えていた。
―十数年後
《過去の自分に逢いに行くことができるシステムがいよいよ一般公開されました。椅子に座って、戻りたい時間を思い浮かべるだけ。過去を変えて素敵な未来を手にしましょう!》
公開:19/04/02 00:48
タイムスリップ
田丸さんと橘ケンチさんのショートショートのイベントで感化されて始めました。初心者ですのでお手柔らかにどうぞ。
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