10. 悪夢と夢喰い

とある軍事施設に二人の博士がいた。
化学兵器になりうる物質の研究をしているＣ博士と、生物兵器になりうる細菌の研究をしているＢ博士である。
そんなある日、Ｃ博士が『うなされ物質』なるものを完成させた。Ｃ博士は嬉々として、この物質を微粒子状化させ全世界に放出し始めた。
その結果、悪夢にうなされる事により深刻な睡眠障害に陥る、という奇病が世界中に広がった。
ちょうどその頃、Ｂ博士が生物兵器を生み出していた。それは脳に感染する事により、人びとから夢を奪い無気力な状態に陥れさせる、というものだった。
その結果、Ｃ博士の化学兵器が無力化された。
Ｂ博士が生み出した生物兵器は『貘菌』というもので、夢は夢でも悪夢だけをバクバク奪ったのである。
二人の博士は莫大な研究費を水の泡にしたとして、軍事施設を追い出された。
以降、Ｃ博士はＢ博士の幻影にうなされ睡眠障害に、Ｂ博士は夢を打ち砕かれ無気力になったという。