内臓二十物語 第四臓(肝臓)

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結婚したばかりの嫁は、美しく、慎ましやかで、家事を良くこなし、全く言うことあらへん。強いて欠点を言うなら食事中いつも微笑むばかりで食わん。おかしいと思い、「食べんのか」と聞いても「ダイエットや。見てない時に食べてとるから心配せんといて」と言うばかりや。
その夜、寝てるワシの耳にチューチューと何かを吸うような音が聞こえた。目え開けると、嫁が腹の上に跨ってワシの助骨の下あたりストローのようなものを差し込み、美味そうなんか吸うとる。
「なにしとるんや」
「何てなぁ、肝吸いや。肝吸うとるんや」
そういや、えらい胸ん中がスースーする。
「おい、やめ、さてはお前いつも何も食わんと思ったら化けもんやな!」
「あんた、知らんのか? 肝臓は再生する臓器なんやで。だから大丈夫や、一生かけてゆっくり吸い取ったる。あんたええ肝っ玉してるからねえ」
そう言った嫁はゾッとする程妖艶でな、ワシはもうどうでもようなった。
その他
公開:19/04/03 20:49
更新:19/04/30 16:26
内臓二十物語 第四臓(肝臓) 原案そるとばたあ

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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