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もう立っていられなかった。
急に頭の割れるような痛みに襲われたのだ。
誰もいない夜の街にずらりと自動販売機が並んでいた。
その中の一台に「医療販売機」という輝く文字。
最後の力を振り絞って俺は這いながら近づいていて行く。
販売機に捉まるようにして立ち上がり震える指でなんとか硬貨投入口にコインを入れた。
そのまま俺は道路に倒れたが、倒れた時の痛みもすでに感じなかった。
チャリン…ガチャン…とコインが落ちる音の後にブーン…ゴンゴンゴン…という頼もしげな音が聞こえてくる。
自販機の上部が開き、たくさんのマニュピュレーターが様々な医療器具を持って俺の方に伸びてきた。
一本の触手が俺の右脚を持ち上げ、もう一本はその足にヨードチンキを塗った。
そこはさっき倒れた時にすりむいた所だ。
たくさんのマニュピュレーターが再び中に収まると「医療販売機」は沈黙した。
俺はそのまま気が遠くなり暗闇に飲み込まれた。
SF
公開:19/04/03 10:54
更新:19/04/03 18:00

家韮真実(いえにら・まみ)( 兵庫県 )

もともとは漫画を描いていました。
漫画のアイデアを文字で書いているうちにショートショートも書くようになったんですよね。
名前はもちろんペンネーム。
実際にはない名字を考えました。
読みは、男の子気分の時は『いえにら・まさみ』
女の子気分の時は『いえにら・まみ』に変わります(笑)

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