サラリーマン珍太郎

トレンディ俳優だった斎藤光も仕事が激減。やっと依頼があったのは、舞台の仕事だった。
役柄は、年賀状の執筆に苦悶する、サラリーマン珍太郎だ。
その舞台が始まった。
サラリーマン珍太郎と相対しているのは、郵便ポストマンだ。
「期日の２５日だサラリーマン珍太郎！さあ年賀状を提出してもらおうか！」
「サービス残業で書く暇がねぇんだよ！」
「元日に年賀状を届ける。それが、サラリーマンの常識というものだ！」
「残念だったな郵便ポストマン！お年賀のご挨拶を阻止する方法を思いついたのだ！このハガキをくらえ！」
サラリーマン珍太郎のハガキの束が、郵便ポストマンの口に投函された！
「こ、これは喪中ハガキ！すべて珍太郎宛てになっている！」
「つまり書く必要がないってことさ！
ああっはっはっは！」
観客は呆れて帰ってしまった。
「俳優やめるか」
斎藤光は次の出演を辞退して、就活と闘い、本当のサラリーマンになった。