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頭が痛い。
通勤途中、やかましい工事現場の脇を横切った頃からだ。あの騒音が頭に響いたのだろうか。
道すがら、何故かすれ違う人が私の顔をみるとぎょっとした。目をそらす奴が大半だが、なかには目を真ん丸に見開いてこちらを見続ける奴もいた。
そんなに顔色が悪いのだろうか。
手鏡など持つ習慣などないし、自らの顔を確認できるものは通勤途中には無さそうだ。
それにしても頭痛がひどいな。今日は早退させてもらおう。

会社に到着し、席に付いて一息つく。やはり同僚は皆、私を遠巻きに眺めているようだ。

課長が硬い表情で近づいてきた。
「君、それは本物か」
その声は震えていた。何のことかわからず、ぼんやりと課長を見つめ返した。間近で確認し、"それ"が本物だと確信したのだろう、ギョエー!と課長が奇声をあげた。

女性職員が近づき、黙って手鏡をこちらに向けた。...なるほど、頭痛の原因はこれだったのか。
ミステリー・推理
公開:19/01/09 17:44

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