パンデミック

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 小学3年生の男子が上り棒から転落した。原因は、上り棒を覆い尽くした耳たぶだった。落ちた生徒の体にも無数の耳たぶが生え、落ちた地面も、やがて耳たぶになった。以後、人々の身体を耳たぶが覆い始めた。瞼の裏や、爪の中。そして毛穴という毛穴から、耳たぶが生えた。目も口も鼻も内臓も耳たぶとなり、動物も植物も耳たぶの塊と化していった。地面には蟻地獄のように耳たぶが口を開け、壁も耳たぶで穴だらけになった。
 そう。耳たぶには全て、耳の穴があった。ある耳の穴に調査隊が潜入し、途中の岩盤を爆破すると、隣国の少女の頭が吹っ飛び、同時に、数千人が耳鼻科的重軽傷を訴えた。また、ある男が自分の耳に十数センチのアイスピックを突き刺すと、数キロ先の石垣の耳から、血漿ともに先端が突き出した、との事例もあった。
 やがて、地球は耳だけの星となった。
 そして千年後。地球の無数の鼓膜が、次第に近づく、無数の咀嚼音に震えた…
ホラー
公開:19/01/09 16:51
更新:19/01/09 21:29

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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