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男は、腹を押さえ、軒並みの建物の外壁に肩をかすめながら必死に歩いていた。

燦々とした太陽が照りつけ、少しの気力さえも奪われ、体内に蓄えられた水分は全て干からびてしまった。

男の視界は段々と狭くなり、目の前の焦点が定まらなくなった。

空気は蜃気楼になり、幾ばくの思いも影の粉塵に包まれて消えていった。

日頃から口にしていた毎日の繰り返しに終止符を打つのが、このような出来事だとは想定していなかった。

男は力を失い、その場にばたりと倒れ込んだ。

周りには、死神の人だかりが出来、誰がこの男の命を奪うのかを決め合っていた。

醜い男は、口から落命を吐いていた。

死に神達は、手元の鎌を鈍く光らせ、男の姿をにらみ付けた。

「こいつはまだ、死ぬのにはふさわしくない」
死神達の討論は、男を生かすことに至った。

死神は、男に命の花を食べさせ、現世に蘇らせた。
その他
公開:19/01/10 20:15

神代博志( グスク )









 

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