バンデル大佐のライト辟易

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汗ばんだ手で、できるだけ重要なものばかりを滑り落とし続けてきたような我が人生。
それが書面であれば、大事なものもそうでないものも、等しくビショビショで判読不能だ。
重要な契約書のインクが滲みに滲んで、ありもしない宗教画の中で厳かに微笑む私を図らずも浮かび上がらせてしまう…。
そんな奇跡も、私が気付かないだけで起きていたかもしれないし、あるいはそれは、断頭台での光景であったことも、やはりないとはいえないだろう。そんな状況下におかれた私も、やはり手は汗ばんでいるだろうか?いや、汗ばんでいないほうが不自然というものかもしれない。ビショッビショの手で頑なにレンコンでも握り締めていただろうか、毛むくじゃらの。
「おい、それは俺の足だ」
執行人にそう言われたら、まぁそれまでの話で。余計に気も滅入ってしまうというもの。
そんなことを考えていたら朝が来て、私は顔を洗うためにまた、あらゆるものに頭を垂れる。
青春
公開:19/01/10 14:30

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