天国まで持って行く焼き芋

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今更言うに言えないが、誰しも一つ二つある。
私にとっては焼き芋である。

免許を取った年の初詣。神社の前に、焼き芋屋のトラックがあった。
「買ったげようか?」
断る必要もない。母がくれた芋を齧った。

がり。嫌な予感はしたが、予想に違わず生焼けだった。
否、表面が焦げた生と言っても過言ではない。ついでに元の色が黄緑で、しかもゴミの焼ける臭いを漂わせる時点で確実に美味しくないが、どう控えめに包んで表現しても不味かった。外見で覚悟した領域を軽く突破する、食べ物以前の物体だった。
母に悟らせても、追加を買わせてもならない。私は芋を呑みつつ小走りした。
「1本500円したの」
余計情報ありがとう母よ。生涯口を噤もうと、胃もたれを堪えて誓った。

さて、今年も母と私は初詣に行き、件のトラックに遭遇した。
あれ以来、毎年遭遇する。そしてその度、奴に目をやる母の笑顔が、今年も私の胃に圧し掛かるのである。
その他
公開:19/01/10 01:01
更新:19/01/10 00:19
今更ながら、毎年元旦一発目の 「う~ん」な実話 ※買ったのは初回のみです

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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