幻想動物見物録・御影の場合

私の病院は変わってまして、入院されている中で比較的落ち着かれている患者さまを満月の夜に当院の空中庭園にお招きする散歩会を行います。温室の他に観葉植物が何鉢か置かれているだけのものですが、皆さま楽しまれています。私はその時、こっそり視診しております。
ある方は百舌の群れのようにさざめきながらなんとか人の形を保ち、ある方は頭が複数あります。大きな空洞を抱えたり、そもそも人の形をしていなかったり、皆さま異形の姿でいらっしゃいます。私の目は心の影を見るのです。影は嘘をつきません。背中と同じでございます。先祖は迫害を受けまして、影視式を使うのは私一人です。
月の光が一番冴えますが、日の光でも見えますよ。皆さま一様に歪んでおります。当院の患者さまと変わりません。心に化け物を飼われている。
先生の影も拝見いたしましたが、面白い歪み方をされている。ぜひ当院にいらしてください。なに、ほんの興味本位ですから。