赤提灯の灯り

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東京新橋のおでん屋台。
「赤提灯やってる人ってあなたですか?」
禿頭の生首が、赤ら顔で軒先に吊るされていた。
「あんたは?」
「話、いいですか?」
「いいけど……」
ーーご注文は?
のれんから聞こえる店主の声。俺は日本酒を頼み、客に椅子を詰めてもらった。
「話って?」
「今、就活中なんですよ。でも、ピンと来なくて。赤提灯って酒飲んで赤くなればいいってほんとですか?」
「ばか野郎! 疲れた人達の目印になって、明るく照らすのが俺の仕事だ! よく聞け………と。シラフになったな。兄さん、酒ちょうだい、酒」
「あ、はい」
「しみるぅ」
猪口に口をつけると、頭部が若干、明るくなった。

『もういっぺん言ってみろ!』

突然隣の客がケンカを始めた。
座っていた椅子が倒れ、逃げようとする際、生首にぶつかった。

「「あ」」

地面に落ちた生首は、割れて燃え上がった。
喧騒の中、炎は静かに風になびいた。
その他
公開:19/01/08 08:56
更新:19/01/08 21:20

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

100 サクラ

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