吾輩は「吾輩は猫である」である。

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吾輩は「吾輩は猫である」である。
名前はもう有る。
どこで印刷されたか、とんと見当がつく。
伊予の工場だ。
人が集まる本屋でパラパラめくられた事も記憶している。
吾輩はここで始めて人間というものを見た。
しかもあとで聞くと、それは立ち読み読者という人間の中で一番どうあくな種族であったそうだ。
立ち読み読者というのは時々、我々を捕かまえて少し読んで戻すという話である。
しかし当時は何という考えもなく別段おかしいとも思わなかった。
ただ掌に載せられてめくられた時、何だかくすぐったい感じがあったばかりである。
掌の上で少し落ちついて、立ち読み読者のニヤニヤした面を見たのがいわゆる人間というものの見始めであろう。
この時妙だと思った感じが今でも残っている。

第一、笑っても私を買って帰ってくれないのだ。
のみならず数日後、続きを読みに来る。
これが暇つぶしというものである事はようやくこの頃知った。
その他
公開:19/01/07 21:25

西木( Tokyo/Tokushima )

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