小此木忠命、最後の大脱出

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「小此木忠命 最後の大脱出!」
 映し出される忠命の遺影。棺桶の中、花に埋もれた白装束の小此木忠命が、手錠のままガッツポーズをする。
「失敗即葬式という、前代未聞のショーが始まりました」とアナウンサー。蓋に釘を打つ音が響く。CM。

 現場が火葬場に移る。棺桶の小窓の中で忠命が大きくうなずく。係員が棺を炉へ。
「炉内は800度以上になります。果たして忠命さんは…」CM。

 60分間のモニタリングの後、遺族とアナウンサーの前に係員が押してきたストレッチャーには、一体の骸骨。スタジオから悲鳴があがる。
「失敗です… 小此木忠命、最後…」
 係員が喉仏を見つけ、カメラ前にそれを突き出す。そして帽子とマスクを脱いだ。それは、紛れもなく小此木忠命だ!
「あっ! 大成功です!驚きました。一体、いつの間に入れ替わったのでしょう! さすが、大脱出に人生を賭けた男!」
 拍手と歓声の中、エンディング。
ミステリー・推理
公開:19/01/05 09:57
更新:19/01/06 06:08

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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