連弾

信号の変わり際、『かごめかごめ』に似たイントロのピアノ曲があったな。ちらり掠めて一拍俯く。
ランダムにナビステを弄り、ヒットせず鼻歌で再現を試みてミスり、もやもやを抱えたまま制限速度＋９㎞/ｈアクセルでトンネルを抜ける。
かーごめかごめ、違うもっと。しつこく辿りパネル連打。『あぁそれ・・・な』ツーカーだった合いの手がない。確か好きな曲だろ、なぁ何だっけ？問い掛けても無言の回答。
喋るもんか。皮肉って嗤い、スイッチターンで車を停める。擦り掛けながらぎりぎりイン。タイヤを鳴かせてエンジン切った。

階段を段飛ばして駆け込む。すかした花もジャケットも放り、あいつが買い漁ったラックを虱潰す。タイトルも作者もぼやけた記憶の鍵盤に目を走らせ弾く様に探す。捜す。

――あった。埃まみれのＣＤ-Ｒ。書き殴った字。
コンポに入れる。再生を押す。

二度と聞けない『あぁそれ』が、もう一度だけ聞こえた気がした。