十力の歯石

口から宝石が溢れ出した。意味はわからない。彩豊かなさまざまな形の鉱物が口からざっくざく採取されたのだ。
「歯磨きを怠るからですぞ！」
歯医者にめっちゃ怒られた。どうもこれは歯石らしい。落ちきれなかった口内の主成分だということだ。めっちゃ恥ずかしい。
「いや、しかしこれは稀有な事象！」
鉱物学者にめっちゃ賞賛された。カルシウムが石灰化し、カルサイトになっていたりビタミンが結晶化して柱状核を成していたりとかめっちゃ難しいことを言われた。
とにかく口の中がごちゃごちゃしていて舌触りが最悪だ。取っても取っても宝石が溢れ出す。それは小さな砂つぶか石クズぐらいの小ささだ。ザラザラとカラフルなそれは、見ていて綺麗である。
「ちゃんと歯磨きしよう」
口から虹色の輝きを、ため息混じりに吐き出しながら鏡を見つめた。体に大切なミネラルが飴玉のように輝いている。もしかしたら肋骨に真珠があるかもと、にやりと笑った。