ラッシュのホームを見下ろすのに最適な席で

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 ラッシュのホームを見下ろすのに最適な席で。
「あの人達は信じているのよ」
 市子は紙コップをくしゃりと握りつぶした。
「この世で、あれだけの人間が信ずる物とは?」
「死の遠さ、かな」
「距離?」
 樹記の言葉に、市子は首を傾げた。
「目測って難しいわ。ゴルフはするんだっけ?」
 樹記は首を横に振る。
「そう。私は仕事の関係で少しね。キャディーさんは教えてくれる。あと何ヤードって」
「キャディーさんは死神か?」
「さあね」
 素っ気ない市子に、樹記は、向かいのホームを指差して言った。
「接待ゴルフならOKが出る程度の距離だよ」
「ゴルフはもういい。いささか、陳腐だったわ」
 樹記は、まだ向かいのホームを眺めている。
「ボーリングみたいだったり、して…」
 樹記は座ったまま、右手で、サーっとアンダースローしてみせた。
「それは、この後に分かるわよ」
 市子は足元の手提げ袋をトントンと叩いた。
ミステリー・推理
公開:19/01/03 10:31
更新:19/01/03 20:51

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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