朝の光

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マリさんは泥棒だ。
大晦日の夜、僕は近くの寺に出かけた。そこで友達何人かと鉢合わせ、屋台でイカ焼きを買った。そのあと奴らは僕の部屋になだれ込み、一晩中ぐだぐだ喋った。
「初日の出見に行こうぜ」
僕らは河原へ向かった。河原にはまばらに人が集まっていた。日の出の時間、東の空には雲が出て日の出は見えないまま、明るくなっただけだった。僕らはマンションの部屋に戻り、床やベッドで雑魚寝して昼過ぎに解散した。玄関の鍵を閉め、僕は寝直した。
すっかり日が落ちた後で、僕は目を覚ました。マリさんが帰ってきた。
床に散らばったスナック菓子やペットボトルのゴミを見てマリさんは驚いていた。
僕はすぐにゴミ袋を片手に片付け始めた。その手にマリさんのひんやり冷たい手が触れる。マリさんは水筒を取り出し、僕の両手に水を注いだ。水の面にオレンジ色の光が揺れている。
「初日の出を映した水だよ」
冬の澄んだ煌めきだった。
ファンタジー
公開:19/01/02 08:17
更新:19/01/02 21:09

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