旅のパスポート

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貴女の流したその涙が、パスポートです。
突然現れたシルクハットの男は、一ミリも恥じらうことなくそう言い放った。

社会人になってすでに四年が経った。
初めに就いた仕事は一年持たずに辞めた。次の仕事ではうまくいくと思っていた矢先、人間関係の拗れが原因で辞めてしまった。それからはとりあえずアルバイトで生計を立てている。
友達は大丈夫と励ましてくれるけど、それでも不安になるときがある。
今日も押し寄せる不安から自室で涙している時に、あろうことかこの男は部屋の窓から不法侵入してきた訳である。
「この現実から少しだけ離れて、心を癒す旅に出掛けませんか」
出来るならそうしたい。けど、そんなことをしている余裕がない。
「大丈夫、夜明けまでにはここに帰ってきます。さあ!」
男は私の意見を待たずして、ステッキを振る。

私の涙は弾けて、夜空の星屑となり行き先を示す。

さあ、参りましょう!

え、ちょ待っ
ファンタジー
公開:19/01/02 00:27
スク― 星屑になるパスポート

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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