本当の自分なんてものはどこにもない

思春期の頃、誰もが思うことだろう。
本当の自分なんてものはどこにもない。世間一般という名のレールの上を歩かされ、大人の望む姿を演じる。
中にはそれに反発し、自らの道を進もうとする者もいるが結局のところ、それも反発という名のレールの上を歩いているに過ぎない。
そう考えると本当の自分なんてものはどこにもないって思う。

ある日僕は電車で赤ちゃんを見かけた。母親は育児疲れだろうか？眠りこけてる。
赤ちゃんを見ると今にも泣き出しそうな顔をしている。
僕は見ず知らずの赤ちゃんにやったことのない変顔を見せた。
驚く赤ちゃん。でもきゃっきゃと笑ってくれる。僕も嬉しくなる。
気が付くと母親が目を覚ましていた。僕は我に返り、恥ずかしくなった。
足早に去ろうとする僕に母親は「ありがとうございます」と言ってくれた。

一人になり思い返す。
赤ちゃんには常識が通用しない。
僕は今日、本当の自分を見つけた気がした。