炬燵陣取合戦

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私たちは五人家族だ。寒い冬、一緒に出かけた夜は帰宅するや否や戦いが始まる。
名付けるなら、それは炬燵陣取合戦。
車が家に近づくにつれ、口数が少なくなっていく。エンジンが止まると全員が緊張の面持ちで玄関に立ち、父が鍵を開ける。扉が開くその一瞬で、一斉に家のなかへ転がり込んだ。
「俺いちばーん!」
そう言って、弟はドアに近い炬燵の位置を陣取った。
「あー寒い寒い」
次に母が右側の位置へ滑り込む。
祖母は何も言わず、脇目も振らず、スナイパーのごとく左側の定位置へ座った。
残るは、私と父だ。
睨み合い、走る。最も遠い一角を目指して、力を振り絞る。
「あら、ここにいたの」
「ミィちゃん!」
私たちは落胆する。最後の空席には、あろう事か猫のミィが潜り込んでいた。
仕方なくホットカーペットに座るが、互いに目は死んでいない。ミィが炬燵を出たら、またその場所を巡って戦うのだ。
私たちは五人と一匹の家族だ。
その他
公開:18/12/31 11:30

ハナヅキアキ

生まれ変わったらジンベエザメになりたい。
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使用写真はすべて自分で撮影しています。

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